量子暗号・量子通信国際会議 2010

量子暗号は、将来暗号解読技術が進歩しても絶対に破られることのない次世代の暗号として、実用化が期待されている新技術です。本国際会議では、東京都内の光ファイバー網をつないだ最新の量子暗号ネットワークの実演、及び国内外の最新の研究成果や実用化に向けた動向に関する講演が行われます。また、量子暗号だけでなく、将来の究極のグリーンICTを目指す量子情報通信技術に関する最先端の基礎研究成果の講演や討論も行われます。

スケジュール
10/18
量子暗号ネットワーク実演会、量子暗号技術のビジネス展開、量子通信技術の概要、宇宙量子通信技術開発などに関する講演
10/19, 20
量子暗号を含む量子通信の最先端技術・理論に関する学術講演
プログラムの詳細

1. 量子暗号ネットワークによる暗号化通信の実演10月18日

量子暗号(Quantum cryptography)は、光が持つ粒子(光子)の性質を利用して、暗号鍵を第三者に漏洩することなく送る技術です(量子暗号とは)。安全性が光の物理的性質に拠ることから、将来計算機による解読技術がどれだけ進歩しても破られることがありません。量子暗号は、まずは都市圏内において、行政・金融機関等の極めて機密性の高いネットワークにおける実現が期待され、世界各国で急速に開発が進んでいます。

日本では、NICT委託研究を利用して、主要企業による実用に向けた研究開発が進められてきました。
会議初日には、東京都内の光ファイバネットワークを用いて量子暗号通信をリアルタイムで実現します。

  • 現在一般に利用されている光ファイバ回線により小金井(NICT)、大手町(NICT)、白山(NICT)、本郷(東大)、及び会議会場を多角的に結ぶ「東京QKD*ネットワーク」を使った量子暗号通信を実演します。
  • 実験参加機関:日本からはNEC、三菱電機、NTT、NICT、また、国外からは東芝欧州研究所(英国)、ID Quantique(スイス)、All Vienna(オーストリア)が参加予定。
  • 当日は各拠点間での暗号通信や、盗聴の検知とネットワーク切り替えによる暗号通信回線の復帰など、セキュアネットワークオペレーションの実演を行います。

これらのライブデモンストレーションに加え、本ネットワークの東京大学-NICT間の回線において、高精度光ファイバー周波数伝送技術のフィールド実験も行われます。会議当日にはその成果が発表される予定です。
なお、東京QKDネットワークの詳細については Tokyo QKD Network もご参照下さい。

東京QKDネットワーク

量子暗号による秘匿通信網のレイヤ構造

*QKD: 量子鍵配送(Quantum Key Distribution)の略。量子暗号は暗号鍵を共有することで絶対安全性を提供するため、しばしば量子鍵配送とも呼ばれます。

2. 量子情報通信全般に関する学術講演10月18~20日

量子情報通信技術は、上述の量子暗号だけではありません。最小の電力で最大の伝送容量を実現する、究極のグリーンICTを目指す量子通信技術や、地球規模での量子暗号ネットワークを可能にする量子中継技術や宇宙量子通信技術、また、世界の時間標準を支える時間−周波数標準技術やそれを伝える精密周波数伝送技術など、量子情報通信は様々な分野の将来を支えるテクノロジーとして、その進展が期待されています。そしてこれらの技術の基盤となるのが、光子検出器・量子メモリ・量子光学などの基礎研究開発です。本会議では、これらの量子情報通信技術に関しても、国内外の最先端の研究成果の講演・討論を行います。詳細は講演プログラムをご参照下さい。

量子情報通信技術